大吉。
本郷にある東大キャンパス、そしてスカイツリーと浅草あたりを散策する。
雨も降らず、日も差さず、程よい気候のなか、ゆるりゆるり。
浅草寺でおみくじを引く。
大吉だった。
「縁談、旅行、付き合い。すべて良い結果となるでしょう」と書かれた箇所を
一緒に読んでいた叔母が、こういった。
「縁談っていっても結婚だけじゃないと思うのよ。
自分のことを本当に大事にしてくれる人、大切だと思える人が近くにいること、
それが何よりの幸せよね。それは異性だけじゃなく同性でも」
人との距離感って難しい。
親しいと信じていた人の心が離れてしまったり、後回しにされてしまうこと
ときどき起こる。
結婚したり、恋人ができたり、子どもが生まれたり、
環境が変化するたびに、プライオリティは変化していくものなんだから仕方ない。
そうわかってはいても、子どもみたいに傷ついてしまう自分がいて。
だから余計、叔母の言葉が心に響いた。
「本当に大切な人は何十人も必要ないのよ」
わたしの心、読んでくれてる?
と、思わず聞きたくなってしまった。
あなたはわたしに送られた、神様からの使者ですか? と。
女たちのおしゃべりを、終始、ニコニコ顔で聞いていた叔父。
わたしは小さいころから、母の弟である彼が大好きだった。
大らかで、優しくて、勉強家で、海外を飛び回るカッコイイ企業戦士で。
だけど、自分の業績をひけらかすこともなければ
ましてやわたしたち姪に説教することなんてことももちろんなく。
もともと素敵な男性だったのが、叔母と一緒にいたことで磨かれたんだろうな。
今回、10数年ぶりに叔母と会い、ゆっくり話してみてそう思った。
そして叔母もまた、世界で一番「大切」と想い合えるパートナーを見つたんだな。
ふたりの穏やかな言葉のやりとりを聞きながら、そう確信した。
「舊用多城破」……過去の不幸や多くの悩みも消え去り、良いことが起こるでしょう。
「気にしぃ」の自分に急にサヨナラはできないかもしれないけれど、
おみくじに書かれていた言葉を励みに、歩いてゆこう。
▼東大内にある三四郎池。新緑が空と水面で揺れて、気持ちのいい風が吹いていました。