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1985年 あの夏の記憶

母方の祖父が突然亡くなったのは25年前の夏、
日航ジャンボ機墜落事故の数日前のことでした。


電話で報せを受けた私は、
仕事からクタクタになって帰ってきた母にそのことを伝えなければならず、
「電話をとらなきゃよかった」と心底思ったものです。

半狂乱のようになった母から「なに? どういうこと?」と
いろいろ質問されるのですが、連絡をよこした年上の従姉妹は
淡々と事実だけを告げてすぐに電話を切ってしまったので、
私は何ひとつ母からの質問に答えられませんでした。


当時、小学生だった私は泣き崩れる母の背中をなでるだけ。
祖父が亡くなった事実より、目の前で泣いている母を見るのが
とてもとても辛かったのです。


お葬式が終わった旧家の広い居間では、
延々と墜落事故のニュースが流れていました。
大人たちが酒宴をしている傍らで、私はずっとずっと、
そのニュースに釘付けになっていました。

520名もの命が失われてしまったことが、ただ悲しくて
どうしてこんなことが起こってしまったのだろう?
そして祖父はどうして、こんなに早く逝かねばならなかったのだろう?

そんなことをぐるぐる考えていたのです。


祖父の死と、520名の死。
尊い命が失われるということ。

1985年の夏は私にとって
生まれて初めて生きることの意味を考えさせられた夏でした。


あれから25年。
祖父の優しい笑顔とともに、あの夏のことがありありとよみがえります。


この夏が平和で幸せであることに感謝です。

でも、ひとつだけ願いが叶うなら……
もう1度、おじいちゃんに会いたいです。
by youyounote | 2010-08-12 12:33 | エッセイ | Trackback